この記事を読まれている皆さんは、電気電子系の工業高校や大学の学生さんで、将来、仕事として「電子回路技術者」を目指したいと考えているのだと思います。
皆さんは、電気電子系の工業高校や大学を卒業したら、色々な企業の「電子機器装置関連」の仕事について「電子回路関係」の設計開発製品化に従事したいんですよね?
その一方で、私もそうでしたが、「学校で学んだ程度の知識や技能で、企業の電子回路技術者が即座に務まるであろうか?」という疑問・不安は、皆さんもお持ちだと思います。
そこで、企業で働く電子回路技術者として一人前になるには、自信をつけるにはどうしたらよいか? という漠然とした不安があると思うので、それらを解消し、就職や学生時代の学習へのヒントになればと思い、この記事を書いています。 ご参考になれば幸いです。
因みに、私は企業でプロの電子回路技術者として長年勤務して来ている設計開発技術者の一人です。
昔、私も通ってきた道筋からエッセンスを抽出して、以下いくつかご参考になる事を書いてみます。 あなたも、それらを参考にご自分なりの道筋を描いてみてくださいね。
電子回路技術者とは?工業高校に通う高校生がこれから目指すためにはどうしたらいい?
電子回路技術者とは何なのでしょうか?
みなさんも、漠然と「電子回路技術」といっても範囲が広すぎて、全体像が良くわからないのではないかと思います。
考えてみれば、確かに電子回路技術は電子機器装置のベースですが、色々な分類細分化が出来ますよね。
例えば
デジタル回路・アナログ回路
半導体を使った回路・半導体を使わない回路
デジタル回路も論理回路と信号制御回路に細分されるし
アナログ回路もセンサー回路・普通のアナログ波形整形回路・信号生成加工回路とか無線回路、高周波回路などに分類されるし
半導体回路も 個別半導体回路と半導体集積回路(いわゆるIC・LSI・VLSIなど)
にも分類されます。
広すぎてそんなにたくさん勉強できないし覚えられないよ!!・・・などと
なりかねませんが、慌てないでくださいね。
実は、慣れてしまえばそれらは大した広さや大事ではないのです。
要するに大分類して考えてみると意外にシンプルです。
つまり、確かに覚えることは多いけど、覚え方・視点次第で簡単化できます。
例えば、半導体関係を例にすると。
要するに 半導体は電子回路構成要素として最低限必要で、トランジスタやダイオードの基本知識と動作原理を押さえておけば、ICは、それらの規模が単純に巨大化されただけ。
同様にデジタル回路の基本を押さえておけば論理回路(ロジック回路)・デジタル制御回路も、単純にその延長でしかなく、さらに多くの場合デジタル回路系の主要回路は、機能回路ごとに集積化された半導体ICとしてまとまっているので、それらのIC回路の使い方を覚えておけばよい事になります。
アナログ回路も似ていて、センサ回路・アナログ制御回路・アナログ波形整形回路、電源回路、信号制御回路、無線用回路などのように機能回路ごとに、やはりIC化されているので、アナログ回路の根本動作原理とIC回路の使い方を覚えておけばOKなのです。
ところで 電子回路はいわゆるハード技術ですよね。
ハードに対して一方にはソフト技術、つまりは、今、世の中で大人気のプログラム技術に対して電子回路技術を劣勢に感じてはいませんか?
考えてみてください。
ソフト技術は要するに「単なる命令指示・判断」しかできない事に対し、電子回路はデジタル・アナログ・センサー・信号生成整形・無線通信・機械駆動(電気機械動作変換)などの具体的手応えある「動作」として機能する事ができるものです。
いくらソフトがあっても、忠実・精密・正確に動作できるハード機器が無ければ、ソフトは単なる呪文以下のもので実効性は無いのです。
つまり、より重要な根幹には電子回路のハード技術が必ず必須なのです。
人間のカラダで対応させると、ソフト・プログラムは「頭・脳」に対し、具体的な活動能力を持つ目・耳・鼻・舌・手・足として機能する部分がハード機器であり、ハード機器の大半の根幹を占める要素が電子回路技術ということになるのです。
昨今は自動車でさえその構成要素の大半が電子回路技術で構成され、電気自動車に至っては電気モータを駆動系とする電子回路・電気回路の集合体とさえ言える規模になります。
もちろん、ハードとソフトの中間の様な半導体ゲートアレイ技術を活用した
FPGA・PLD(プログラムロジックデバイス)といった
いわゆるファームウウェア技術(半導体書換え可能デバイス)などもあります。
これらの色々な回路・半導体を駆使して望みの電子回路を設計開発・製品化するのが
電子回路技術者です。
ソフトエンジニアと比較すると、電子回路技術者の仕事は「形が見える」分だけ、仕事の責任も見分けやすいし、成果や結果がはっきりしている点が強みです。
ソフトプログラマーやSEがあふれかえっているのに対して、ハードの電子回路エンジニア(特にアナログ系・センサー系・無線通信系の回路エンジニア)は世の中に人材が少なく引く手あまたです。
ところで、以上での説明範囲では、まだ「広すぎる」状況に変わりはありませんよね。
実は・・・・電子回路産業的には
更に、幾つか大きな分野に分類が出来ます。
その詳しい内容については次の項で・・・。
電子回路技術者の主な仕事内容は?
電子産業的に電子回路技術を大別分類すると
・電子制御回路技術(論理制御・PC制御・組込制御・シーケンス制御)
・センサー回路技術(人間の五感に類似するセンシング素子とその駆動回路)
・一般アナログ回路技術(波形整形制御・信号発生加工など オペアンプが代表技術)
・通信回路技術(有線・無線・通信交換・多重通信・変復調など)
・線路技術(有線線路・アンテナ線路・アンテナ本体・信号伝搬技術)
・電源回路技術(省電力・効率化・電池接続充放電回路など)
の6分野ぐらいに分類できます。
要するに、産業界で電子回路技術者として認識・重用される技術分野は、これらの6分野のどれか になる訳です。(もちろん、全部が扱えれば鬼に金棒)
電子回路技術者を目指すなら、少なくともこれら6分野のどれか1つでも「得意分野」を確保することが必要でしょう。(できれば3~4分野をカバーするのが好ましいです)
因みに、応用システム的な電子回路技術者を目指す場合(例えばロボット系とか、将来の電気自動車系など)これら6分野のほとんどの技術素地が必要となります。
あなたが狙いたい企業・産業界では、どの電子回路技術分野が主要となるか、を皆さんご自身で、調べてみてくださいね。
大抵の場合 制御技術・センサー技術・一般アナログ技術・有線通信技術の4本柱は互いにセットとなって必要となる事が多いです。
更に、昨今ではいわゆる「組込み制御技術」がハヤリなので、FPGAやPLDといった分野のC言語等を用いたファームウェア制御も身に着けておくと更に良いでしょう。
また、それらのバックグラウンド技術として、パソコンによる自動計測やパソコン制御通信などの技術も、開発設計の効率化・自動化で大前提なのでお忘れなく。
21世紀の産業界では ソフト・プログラムはもちろん、自動制御・自動計測とともに、それらのベースとなる「電子回路技術」は、産業界のあらゆる分野で必要とされる技術になってきます。
しかも、回路技術者は意外に少ないので、今後の日本並びに世界の産業界でニーズが急激に高まる事は間違いないと思いますよ。
どんな産業分野でも、自動監視・自動識別・小型化・オンライン制御化は必須のニーズとなるので、それらを具体機能化させるために、ハードが第一、次にソフトになるからです。
あなたが狙いたい、やってみたい産業分野・企業ではどの回路分野がコアになりそうで、どの回路技術を重点的に身に着けると将来性が見込めるか、あなた自身の目で見て頭で考えて、ネットで調べて、場合によっては企業訪問して考えてみてください。
では次に、これらの技術分野を簡単かつ効率的・短期に知識・技能(回路組立実装技術)を身に着けるにはどうしたらよいでしょうか?
その大きなヒントになるのが次の項目で記述する「資格取得」です。
電子回路技術者になるため取っておくと良い資格はある?
電子回路技術をコンパクトに短時間で効率よく、全体像や必要な背景知識・コア知識・技能を体系的に身に着けるには日本には「資格試験」という、手頃なシステムがあります。
もちろん学校で教えてもらえる授業や実習による知識・技能も大切で、よりベースにはなるのですが、ハッキリ言って、学校教育の範囲では産業界の視点で見ると狭すぎます。
しかし、最低限、学校教育で得られる基本知識や技能が無ければ、全くの独学で資格試験だけをパスできても、それこそ知識偏重となり、企業の現場では使えなくなってしまうのです。
学校では基本ベースの知識技能を、資格試験関係では「コンパクトな特定分野の知識技能の集約」を図るのが最も総合的に効率の良い「技術・技能の身に着け方」といえるでしょう。
そういう視点で資格試験や機能検定などを考えてみてください。
因みに、
資格試験関係がなぜ「コンパクト・高膣的」であるかというと
主要テキスト・参考書・受験ガイド・過去問題例・技能講習システムなども各々探せばコンパクト・短期実施可能な物が世間で簡単に入手でき、そろっています。
一度、都会の大きな本屋に行って技術関係の資格試験コーナを探してみてください。
大きな本屋を3~4書店回ってそれらの書籍の中を斜め読みしてみることをお勧めします。
(もちろん 地域にある大型のブックオフなども探せば関係書籍は見つかると思います)
そういった自分の足を使ったリサーチと一緒にネットでの調査もしてみてください。
ネットには動画解説というコーナサイトもあったりするので、
「実技練習」などの参考にもなるでしょう。
具体的な資格は
大きく 次のようなものがあります。
- 業界技能関係:電子機器組立作業・電子回路接続・プリント配線板製造設計
- 民間認定試験:ラジオ音響技能検定・ディジタル技能検定・E検
- 国家資格:電気通信主任技術者・工事担任者(アナログ・デジタル)無線通信技術士・電気主任技術者・電気工事士・電気工事施工管理技士その
- その他参考1:家電製品エンジニア・CATV技術者
- その他参考2(あるとより強力な物):情報処理技術者関係・ソフト各種技能検定
これらの色々な資格検定があります。
当然、検定合格し、資格が取得できることが望ましいですが、工業高校の皆さんや大学1~4年生でこれらの資格にアタックするには半年で1資格が限度なので、卒業までに4~5種類ぐらいの資格検定の勉強を実施し、実際に合格・資格取得が2種類ぐらい取れておれば現実的には十分です。
なお、学校卒業後にも、会社に勤めながら、会社入社5年目ぐらいまでに最初に目標を立てた4~5種類の全資格を受験し、できれば全資格を取得するのが技術者としての腕を磨く上ではベストな展望です。
学校卒業までに2種類程度の資格がとれ、学習だけは全資格を着手しておくだけで学校では教えてもらえない「勘所」「要点・重点」「産業界の常識や規格・基準」などの基本が全部身につくからです。
どれを選び、どれを受検するかは あなたの好みもあるでしょうし、将来のあなた自身の電子回路技術者目標もあるでしょうから、各々、ご自分に適した資格や検定を目標にするとよいと思います。
因みに、情報処理やコンピュータ・プログラム系は電子回路技術と直接は関係しませんが無線技術士・ラジオ音響検定・家電製品総合エンジニア・E検定とともに総合的に電子回路システム・電子技術応用・自動制御通信関連をとらえるのに非常に参考となるので余力があれば、参考書やテキストをチラ見する程度でもしておくと将来への自分投資になると思いますよ。
その意味では電子ではなく電気系・電力系関連の電気工事士・電気主任技術者も総合システムやエネルギー関係、家電や自動車含む社会インフラシステム応用への展望参考にもなります。
さいごに
いかがでしたか?
少しでもあなたの参考になれば幸いです。
将来、電子回路技術者を目指す・・・といっても、以上書いてきたように色々な産業界で色々な電子回路応用があるので、電子回路全般をまんべんなく全部の技術範囲を網羅するのは学校で勉強されている皆さんには、まだ「かなり荷が重い」と感じられること思います。
でも、根は簡単で、要するに電子回路技術は、電子回路を用いた世の中の色々なニーズに対応する電子的な「機能」を達成するための方法を具体化する技術体系にすぎません。
単純に電子回路ハードだけで実現する方法もあれば電子回路とパソコンを接続して自動制御自動判断する方法もあれば、電子回路自体に簡易プログラムを組込む組込システムという方法もあります。
技術的根底には半導体と電子部品+回路組合わせ接続+回路基板設計+装置実装により装置・ユニットの骨組みが構成されその装置・ユニットをシステムに組込んで自動車とか家電とか電子製品、無線装置とかとして「具体製品化」しているだけです。
そういった製品としてまとめるために前述の6巣の大分類の電子回路技術があり、ソフトや組込ファーム技術やパソコン制御・コンピュータ制御が絡むわけです。
以上で述べてきた視点・考え方・学校と資格を使い分けで、将来希望する電子回路技術者として活躍したい分野や業界・企業を検討・挑戦・就職するための参考にこの記事がなれば嬉しいです。
大変長くなってしまいましたが、最後まで熟読いただき誠にありがとうございました。
あなたの将来に幸福が見えて来ることをお祈り申し上げます。
※現役技術者の方からいただいた言葉でした(´▽`*)
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